本やら美術やら舞台やらが好きな人が、ひたすらに好きなものへの愛を叫んだり叫ばなかったりするブログです。読書歴は(http://booklog.jp/users/naneko)

ソール・ライター展で泣いた

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6月21日、暴風の渋谷で傘をひっくり返しつつ、よたよたとソール・ライター展に行った。

 

めちゃくちゃ良かった。

ほんとうに。思い出すと語彙力が低下するくらいに良かった。

 

 

 私は、昔から美術館が好きだ。

ごく一般的な大学生にしては足を運んでいる回数も多い方だとは思う。

今までに美術館で泣いたのは3回。

東京国立近代美術館「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」(2012)、大原美術館のエル・グレコの「受胎告知」(来訪は2013年)、そして今回のBunkamura「ソール・ライター展」だ。

 

 

ソール・ライターは、ニューヨークで活躍した写真家である。

初めは『Harper's BAZZAR』『VOGUE』『ELLE』など名だたるファッション誌に写真を提供していた。しかしある時、姿を消して「隠遁」。

その後83歳で写真集を発刊し、衝撃の「デビュー」を飾った。
元々は画家を目指していたという彼の写真は、その目の付け所といい切り取り方といい、どことなく「絵」に近い雰囲気を感じさせるものだった。
アーティストについては私が話したところでGoogle検索に勝てる筈もないのでこれまでにしようと思う。

ちなみに言うと、映画にもなっている。これまたとても良い。(私がソール・ライターを知ったのはこの映画がきっかけだったりする)

 

 



 

 ソール・ライター展は、大まかに分けてモノクロ写真とカラー写真と絵画(写真へのペインティング含む)で構成されている。

会場に入ると、カラーとモノクロが混在した商業ファッションスナップから始まり、次にモノクロの芸術写真、さらにはカラー写真、そして絵画、最後に女性の写真が並ぶ。

 

 この、カラー写真のゾーンの始まりで、気がついたらぽろぽろと涙が流れていた。

もちろんモノクロ写真も素晴らしかった。

特に「靴磨きの靴」は、琴線に触れた。

 

展示室の壁にあった以下の言葉が、彼の写真の雰囲気をとてもよく伝えていると思う。

写真を見る人への写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時々提示することだ。

ー『ソール・ライターのすべて』P.104

 

カラー写真は本当にすごかった。

彼の切り取る日常にありふれた"色"の美しさが。

曇ったガラスの奥の誰かの力強さが。

当たり前の光景を、時を止めて見た時の新鮮さが。

そういったものが、少し疲れていた私の心をブワッと溶かしていった気がした。

 

ありふれているものも、すべてが美しくて。

ファッションスナップな登場するような人々には到底及ばないであろう「だれでもない人」でも、充分に美しかった。

そして、ピントが合うことだけが美ではないと感じた。

 

取るに足らない存在でいることには、はかりしれない利点がある。  

ー『ソール・ライターのすべて』P.10

 

何気なくても、主役にならなくても、ピントがあってはっきりしていなくても、それで充分。

様々なものを語れる「背中」を手に入れられれば、それでいいなと思えた。

 

人の背中は正面より多くのものを私に語ってくれる。

ー『ソール・ライターのすべて』P.92

 

言葉にするとあまりにも陳腐で自分でも呆れ果てるほどなので、是非とも図録を手にとっていただきたい。

(展覧会は6/25で終わってしまう…)

 

All about Saul Leiter  ソール・ライターのすべて

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